卒業論文・修士論文の概要 2014年度

修士論文

大石 隼人 MBRにおける長期ファウリング予測システムの確立
MBR(Membrane bioreactor、膜分離活性汚泥法)は排水に含まれる有機物を活性汚泥中の微生物によって分解し、その処理水と活性汚泥とを膜を用いて分離する水処 理技術である。MBRでは膜を使用しているため、活性汚泥などの固形物が膜に詰まってしまうファウリングという問題がある。ファウリングが進行するとろ過 に必要な膜差圧(TMP, transmembrane pressure)が上昇し、運転コストが増大してしまう。その対策として薬品を用いた膜の洗浄を適切な時期に行う必要がある。薬品洗浄の適切な時期を、 ファウリングの進行と共に上昇するTMPを長期的に予測し設定した閾値と比較して決定することが試みられている。 そこで本研究では長期TMP予測の精度向上を目的とし、前の時間のR(Resistance, 膜抵抗)やfluxを説明変数、次の時間のRを目的変数とするR予測モデルを、最新のデータを用いて更新するMW (moving window) R予測モデルと長期予測の精度を考慮したモデル選択手法を提案した。さらに、長期予測時にfluxの変動が起こる場合にも高い精度で予測を行なうために、 fluxの変動を考慮したモデル構築手法とflux変動時のRの変動を補正するΔR補正モデルを提案した。実際のMBRデータを用いた解析により、モデル の更新と選択によりTMPの長期予測の精度が向上することを確認した。また、fluxの変動が起こる場合にも、提案手法を用いることで、適切なTMPの長 期予測が可能であることを確認した。
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木村 一平 化学プラントの運転データを活用したプロセス制御手法の開発
プ ロセス産業において製品の品質改善や生産性の向上が求められており、設定値変更や外乱に対して迅速かつ安定に制御を行う必要がある。本研究では日常の運 転データから得られる情報を利用することで効率的なプロセス制御を行うことを目的とし、ソフトセンサーとその逆解析を応用した制御手法である inverse soft sensor-based feed forward and feed back 制御法 (ISFB)を開発した。ISFBではプロセスの制御変数yを目的変数、操作変数Uとその他のプロセス変数Xを説明変数として構築されるソフトセンサー と、過去の運転データやプロセスに関する知見などを基に作成されるUの時間変化のひな形を使用して操作量を決定する。Uの時間変化を決める際はプロセスの 運転条件をXとしてソフトセンサーに入力することでその影響を考慮に入れる。またソフトセンサーとしてアンサンブルモデルを使用し、yの推定値のばらつき から得られる各候補の信頼性を評価指標に組み込むことで、ソフトセンサーの適用範囲を考慮に入れた操作量決定が可能となる。選択候補に基づいて実際に操作 を行う際にはyの実測値を用いたバイアス補正やソフトセンサーの更新を行うことでモデル誤差や非観測外乱にも対応可能となる。連続槽型反応器のシミュレー ターを用いたケーススタディを行い、ISFBを用いることで効率的な設定値変更が可能であることを確認した。
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卒業論文

柴山 翔二郎 赤外スペクトルデータを用いた混合溶液における純物質の濃度予測モデル構築手法の開発
化 学プロセスの効率的な運用のために、各工程での品質のモニタリングとその結果を踏まえた適切な制御を行うことが検討されている。例えば錠剤製造プロセス の混合プロセスでは、混合溶液を構成する成分の濃度が所定値に達することを利用して混合の終了を検知する。濃度の予測には非破壊検査で得られる赤外スペク トルデータを入力とする統計モデルを用いる。実プラントでサンプリングして品質の測定を行うことは困難であるため、少数のモデル構築用データから高精度な 濃度予測を行う統計モデルの構築が求められている。そこで、ランバートベール則を利用してモデル構築用データなしに濃度予測の可能なIterative Optimization Technology(IOT)が提案されている。しかし、分子間相互作用を持っていて混合溶液のスペクトルx_mixと純物質のスペクトルx_pure との間に線形性が成り立たない混合溶液に対しては有効な濃度予測手法が提案されていなかった。本研究では、分子間相互作用についての解釈が可能で、波長選 択なしに高精度な濃度予測を実現する新規非線形IOTの開発を行った。分子間相互作用による変形が成分iのモル分率の累乗に比例すると仮定して、2つのモ デル構築用データからx_(nonlin,i)を推定する。推定されたx_(nonlin,i)を用いて図のモデル式に従ってx_mixとの誤差を最も小 さくするモル分率r_iを計算する。既往手法に対する優位性を示すために5成分系のシミュレーションデータおよび水とイソプロパノールとの2成分系の実 データを用いたケーススタディを行い、いずれの場合も提案手法でのみ波長選択なしに高精度な濃度予測を行えることを確認した。また、実データにおいては OHバンドによるピークをx_(nonlin,H_2 O)として検出できることを確認した。
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武田 俊一 目的領域に多様な構造を生成する化学空間探索型構造ジェネレータの開発
近 年の新薬の開発は、開発の効率化を図るためコンピュータを活用することが多くなっている。具体的には多様な化学構造からなるバーチャルライブラリの中か ら、目標タンパクへの活性や吸収性、毒性等の医薬品開発において鍵となる性質の予測を元にスクリーニングを行い医薬品の候補となる構造を選択し、その構造 を実際に合成して試験を行うという流れで行われる。この過程において新薬はライブラリの中から選択されるため、新薬となる構造を含む可能性が高いライブラ リとなっていることが重要である。 本研究では実験で得られている活性データを元に新規構造をデザインし、新薬となる構造を含む可能性がより高いライブラリを作成する手法の開発を目的とし て、三島和晃の修士論文の研究で開発されたde novo design algorithm for exploring chemical space (DAECS)をさらに改良した。まず活性値分布予測の精度を上げるため予測に非線形回帰手法を導入し、活性値以外の性質についても考慮した探索領域の選 択を行うため医薬品データを用いて医薬品らしさの分布の予測を導入し、さらに生成構造の多様性を向上させるため構造生成時に部分構造を用いた構造変化を行 う手法を導入した。この改良の有効性を確かめるためにリガンド結合活性データを用いたケーススタディを行い、医薬品となる可能性が高いと考えられる構造が 多様に得られることを確認した。
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