卒業論文・修士論文の概要 2013年度

修士論文

菅間 幸司 2次元QSRRモデルの構築と逆解析を利用した構造推定
GC×GC/MS は2次元ガスクロマトグラフと質量分析計を組み合わせて用いる手法であり、高分子の熱分解生成物などの混合物に対する分離および分析のた めに用いられている。観測された保持時間やマススペクトルをデータベースと比較することで構造推定が行われるが、この方法ではデータベースには存在しない 未知化合物を扱うことは困難である。そこで新規化合物の保持時間を予測するためにQuantitative Structure Retention Relationship (QSRR)が提案されており、これまでに様々な化合物種に対して高精度なQSRRモデルの構築がなされてきた。本研究ではQSRRモデルを用いた逆解析 によりGC×GC/MSによる測定結果から未知化合物の構造を効率よく推定できる手法の開発を行った。まず、未知化合物のマススペクトルをもとに、構造中 にどのような部分構造(フラグメント)がどのような組成で含まれるかを分析者が推定する。構造ジェネレータを用いてフラグメントを組み立てて、多数の仮想 構造を生成する。仮想構造の保持時間の値をQSRRモデルを用いて予測する。また、QSRRモデルには高精度な予測が可能である適用範囲が存在することを 踏まえ、各予測値に対する許容誤差を推定する。仮想構造の保持時間の予測値を未知化合物の保持時間の測定値と比較し、その差が許容誤差の範囲内である仮想 構造のみを候補構造として選択する。実際にGC×GC/MSによる測定データを用いた検証を行い、本手法の有用性を示した。
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三島 和晃 化学空間の可視化を利用した化学構造ジェネレータの開発
創 薬研究の初期段階においては未知の活性化合物を探索する必要があり、バーチャルに新しい化学構造を生成する様々な化学構造ジェネレータが提案されてき た。一般的な構造ジェネレータは高い活性をもつ構造を生成するが、医薬品となる化合物は活性のほかにADMETなどの様々な特性を満たす必要性があるた め、活性が高いのみならず多様性の高い構造を医薬品となる化合物の候補として生成することが必要とされている。本研究では多様な構造を生成するため、構造 記述子により定義される化学空間上の任意の領域を探索する構造ジェネレータ、de novo design algorithm for exploring chemical space (DAECS) を開発した。化学空間上では既存の高活性化合物の周辺領域に同じように高い活性をもつ新規構造が存在すると考えられ、そのような高活性領域内の様々な位置 を探索することで、高い活性をもつ多様な構造を生成することが可能となる。化学空間上のデータの分布はgenerative topographic mapping等の可視化手法を用いて確認する。DAECSの有用性を示すためにリガンド結合活性データを用いたケーススタディを行ない、可視化された化 学空間上の目標領域に新規構造を生成し、多様な構造が得られることを確認した。さらに得られた新規構造の活性はタンパクのX線結晶構造を利用したドッキン グシミュレーションにより検証した。DAECSを用いることで、効率的な創薬開発が可能となることが期待される。
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卒業論文

中尾 篤之 目標達成確率を考慮した汎用的な実験計画手法の開発
材 料設計や分子設計などにおいて目的の物性を持つ物質を開発するためには、原料の種類や組成、反応条件などを様々に変えながら実験を繰り返す必要がある。 開発コストを削減するためには、既存の実験結果をもとに実験条件と物性の関係を予測し、各実験条件を評価することが行われる。しかし、予測値には不確かさ が存在するためそのまま評価に用いるのは必ずしも適切ではない。このため過去の研究において、ガウシアンプロセスという手法を用いて各予測値の不確かさを 見積もり、各実験条件において目標物性値を達成する確率を評価することが行われた。しかし、有効な評価を行うことができる目標達成確率を計算するために必 要な実験結果が不足している状況では、目標達成確率が最も高い候補で実験することによるメリットは少ない。また、相対的に目標達成の可能性が高い実験条件 は互いに似た実験条件であることが多い。そのため、高い目標達成確率を持つ実験条件において同時に複数の実験を行うと、似たような実験を複数行うことにな り効率が悪い。本研究では実験を行うことによって得られると期待される情報の量を前もって評価することでこれらの問題の回避を目指した。目標達成確率が相 対的に高い実験条件における各実験条件で実験を行うことによる予測値の不確かさの減少量をもとに、情報の量に関する評価指標を作成した。この評価指標の有 効性を確認するために、目標達成確率と組み合わせて2つの実験条件を同時に選択する実験計画手法を開発した。関数によって作成したデータを用いて本手法の ケーススタディを行い実験により得られた目標達成に必要な情報の増加を確認し、提案した指標の有効性を確認した。
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宗像 亮 ソフトセンサーにおけるモデル劣化および更新頻度低減の試み
化 学プラントにおいては、測定が困難な変数yの値を測定が容易な変数Xの値から推定するソフトセンサーと呼ばれる手法が使用されている。その問題の1つと して、長期間同じソフトセンサーモデルを使い続けるとXとyの関係がモデル構築時から変化し、モデルの予測精度が低下することが挙げられる。このモデル劣 化への対応には様々な手法が提案されているが、それらの多くはプラント運転中にyを随時測定することが必要である。目的変数yがプロセス内に複数存在する とき、その測定コストが問題となる。本研究では、モデル劣化の度合いが大きい場合にのみモデル更新を行う手法を提案した。同一プロセス内に存在するy1と y2はプラントの状態変化から受ける影響が類似するため、y1、y2の予測モデルが劣化する時期は近いと考えられる。y2のモデルの予測精度が低下した時 期に適時y1の測定を行うことで、従来より少ない測定回数でモデル劣化を抑制できる。ダイナミックシミュレーターで作成したデータおよび実プラントデータ を用いた解析の結果、提案手法を用いることでプラント全体での測定コストの低減および長期的なモデルの予測性維持が可能であることが示された。
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