卒業論文・修士論文の概要 2012年度

修士論文

岸尾 拓弥 効率的な材料設計のための戦略的な実験水準決定手法の開発
材 料設計やプロダクトデザイン、分子設計などの様々な現場において、目的とする物性を持つ物質を開発するのは非常に困難である。これは、原料の化学構造や 組成、合成条件などの様々な実験・製造パラメータの組み合わせは数多く存在し、実験の結果得られる材料の物性との関係が複雑であるためである。このため適 切なパラメータの探索には多くの実験回数が必要となり、開発コストが増加してしまう。こうした問題を解決するために、既知の実験パラメータと得られる物性 の間で物性予測モデルを構築し、パラメータ候補の物性予測及び目的物性を達成するパラメータの逆解析をすることで効率的に材料探索を行う。しかしこうした 回帰モデルによる予測値を用いた探索には内挿領域を探索し続けるなどの問題点がある。そこで本研究では効率的な材料設計を目的として、物性予測値の他に予 測誤差の分散に加えて既存データのデータ分布密度を考慮した物性予測モデルを用いた探索を行った。予測誤差の導入による探索性能を向上させ、データ密度を 用いることにより予測信頼性の高い候補を優先的に選択することで確実性の高い探索が可能となる。次に実験する候補を選択するための評価指標として、目的物 性達成確率Pと既存データ密度DDを算出し、これらを回帰手法ごとにいくつかの方法で組み合わせて様々なデータに対して適用した。データの特徴ごとに適し た組み合わせ方が異なり、より少ない実験回数で目的候補を探索するための最適なバランスが存在することが示唆された。また、予測的説明分散Q2を適切に用 いることにより最適な回帰手法を自動的に判別するシステムを構築し、その有効性が確認された。
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卒業論文

加藤 正朗 目的変数間の関係を活用したモデル劣化低減手法の開発
化 学プラントを安全かつ効率的に運転するためには、内部の状態を把握し、適切に管理することが必要である。そのために温度、圧力、濃度といったプロセス変 数を測定し、それに基づいてプロセスの管理を行う。しかし変数によっては、測定時間やコストの問題からリアルタイムな測定が困難な場合がある。そこでソフ トセンサーと呼ばれる技術を用いて、測定の困難な変数の値の推定を行う。ソフトセンサーとは容易に測定可能な変数Xと測定の困難な変数yの間に数値モデル を構築し、Xのリアルタイムな測定値をモデルに入力して、得られた出力値をyの値として利用する手法であり、化学プラントで広く用いられている。しかしソ フトセンサーにはモデルの劣化という問題点がある。これはプラント内部の状態変化により、変数間の関係がモデルを構築した時点とは異なるものになり、その 結果モデルの予測性能が低下してしまう現象である。モデルの劣化を防ぐために既にいくつかの手法が提案されているが、それらはプラント運転中にyを随時測 定することでモデルの劣化に対応している。yが複数あるプラントにおいてyの測定コストを削減するため、本研究では複数のy間の関係を活用したモデル構築 を提案した。具体的には、y1、y2の2つのyがある場合に、y2をy1を予測するための説明変数に加える手法である。y2をy1、y2双方の予測モデル 劣化抑制に用いることで、y1の測定が不要となり、プラント全体でのy測定コストを削減できる。プラントのシミュレーションデータを用いて検証を行った結 果、提案手法を用いることで少ないyの測定回数でモデル劣化を低減できることが示された。
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大石 隼人 Membrane bioreactorにおける長期膜差圧予測手法の開発およびプロセス管理への応用
膜 分離活性汚泥法 (membrane bioreactor, MBR)は、排水などに含まれる有機物を活性汚泥中の微生物により分解し、その活性汚泥と処理水とを膜によって分離する水処理技術である。MBRでは活性 汚泥などが膜に詰まってしまうファウリングという問題点を抱えており、ファウリングが進行するとろ過に必要な膜差圧 (transmembrane pressure, TMP) が上昇し運転コストが増大してしまう。その対策として薬注洗浄を定期的に行う必要があり、適切な薬注洗浄の時期を事前に把握することが重要となる。そこで TMPの長期的な予測を行い、設定したTMPの閾値と比較することで適切な薬注洗浄の時期を把握することが試みられている。また、MBRにおいて運転管理 を行う場合、活性汚泥と処理水の混合液における浮遊物質 (mixed liquor suspended solids, MLSS)の濃度が重要となる。しかし、MLSS濃度の測定には時間やコストがかかるため、水質などの変数からMLSS濃度を予測できることが望ましい。 以上の背景を踏まえ、本研究ではTMPとfluxの実測値から翌日の膜の抵抗を予測するモデルにおいて、変数の時間遅れを考慮することによりTMPの長期 予測の精度向上を目指した。また、MLSS濃度予測モデルの構築においては変数選択手法であるGALPS(genetic algorithm based partial least squares)法を用いることにより、予測性能の高いモデル構築に必要だと考えられる変数の探索を行った。TMPの長期予測では変数の時間遅れを考慮す ることにより、TMPが一定となる期間が少ない場合に予測精度が向上することを確認した。また、MLSS濃度予測モデルではGAPLS法を用いることに よって、予測精度の高いモデルの構築とそれに必要な変数の探索に成功した。
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木村 一平 ソフトセンサーを用いた新規プロセス制御手法の開発
プ ロセス産業では製品の品質改善や生産性の向上が求められており、そのためには設定値変更や外乱に対して素早く応答ができること及び安定性の高いプロセス 制御を行うことが重要である。現在プロセス制御としてはPID制御やモデル予測制御が広く用いられているが、それぞれ制御パラメータの最適化が複雑であ り、制御変数yおよび操作変数U以外のプロセス変数Xの影響を考慮に入れた制御を行うことが困難である。そこでこれらの問題を解決し、迅速かつ安定な制御 を行うことを目的として、ソフトセンサーとその逆解析を用いた制御手法を提案した。ソフトセンサーとは温度や流量などのオンラインでの測定が容易な変数を 説明変数、濃度や密度などの測定が困難な変数を目的変数として統計モデルを構築し、オンラインで得られるデータから測定困難な目的変数の値を推定する手法 である。また逆解析とは構築したソフトセンサーモデルを用いて目的変数の目標範囲を実現する説明変数の値を探索することである。本研究では、プロセスの過 去の運転データを用いてU、Xを説明変数、yを目的変数としたソフトセンサーモデルを構築する。Xをプロセスの運転条件に合わせて設定値としてモデルに入 力し、逆解析を行うことでyの目標値を満たすための理想的なUの操作方法を決定する。CSTRのシミュレーションに対して本手法を適用し、有効性を示し た。
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