卒業論文・修士論文の概要 2011年度

修士論文

成 敬模 Membrane bioreactorにおける長期的膜差圧予測モデルの構築
膜 分離活性汚泥法 (Membrane bioreactor, MBR) は工場排水や生活下水などの汚水を微生物で分解し、その後処理水と微生物を膜で分離する装置のことである。短時間かつ省スペースでの水処理が可能であるた め、ビルや工場などにMBRを分散設置して無人運転を行うことは水不足問題の解決策として注目されている。しかし、膜に微生物や固形物などが堆積すること でファウリングが発生することで膜差圧および運転コストが上昇してしまう。そのため、膜差圧が一定水準に到達すると膜を薬品で洗浄し膜に付着した堆積物を 除去しなければならない。そこで本研究では膜洗浄時期の推定のため、1週間以上の長期にわたり膜差圧を精度良く予測するモデルの構築を試みた。MBRに測 定されているパラメータをオンラインで測定し、膜差圧予測モデルに入力することで将来のTMPを出力する。この情報を遠隔地にある管理室に送り、それを踏 まえて管理室から対象のMBRを適切にコントロールすることで、分散型MBRの無人管理が達成される。本研究では水質以外の変数から膜抵抗 (resistance, R)を予測するモデルと水質に関連した変数からファウラントの堆積しやすさ(deposition rate, DR)を予測するモデルを構築し、それぞれのモデルから長期膜差圧予測を行う手法を提案した。また、これらの提案手法を実際の運転データに適用した結果、 長期にわたり膜差圧の予測が可能であることが示された。
 song_m
岡田 剛嗣 モデルの予測信頼性を考慮した適応的ソフトセンサー手法の開発
産 業プラントにおいて高品質な製品を安定して供給するために、温度、圧力、流量、濃度などのプロセス変数の値を測定することにより、現在のプラントの状況 が正常か異常かを判断する。しかし、制御したい変数を必ずしもオンラインで測定できるとは限らない。この問題を解決するため、プラントにおいてはソフトセ ンサーが広く用いられている。ソフトセンサーとは、オンラインで測定可能なプロセス変数Xと測定困難な変数yの間で数値モデルを構築し、目的とした変数の 値を推定する手法である。ソフトセンサーを用いることで、オンラインでの測定が容易な変数から濃度などの測定困難な変数をオンラインで推定できる。ソフト センサーは大変有用な手法であるが、プラントの運転状況が変化した場合、以前に構築したソフトセンサーモデルを使用し続けると予測誤差が大きくなるという 問題が生じる。そこでモデルを再構築することが考えられるが、安心してソフトセンサーを使用するためにはモデルを再構築するたびに、モデルの予測性能の確 認や妥当性の検証等が必要となる。実際のプラントでは数多くのソフトセンサーが使用されていることもあり、そのようなモデルの確認および検証には多くのコ ストや労力が必要となる。そこで本研究ではモデル更新のコストと予測性能の問題を解決するため、ソフトセンサー識別モデルによって現在の運転状態からモデ ル更新が必要かどうかを判断することを提案した。ダイナミックシミュレータで発生させたデータおよび実プラントデータを用いた解析の結果、本手法を用いる ことでモデル更新頻度の減少と高い予測性能のソフトセンサーモデルの構築を達成できることを確認した。
 okada_m

卒業論文

菅間 幸司 近赤外スペクトル及び統計手法を用いた蜜柑の酸度予測モデルの構築
食 品市場において食品の安全性や信頼性の確保は重要な課題であり、選別作業の効率化や全数検査の必要性から非破壊内部品質予測手法の一つである近赤外スペ クトル法の普及が進んでいる。近赤外スペクトル法では、非破壊・非接触な測定が可能であるという近赤外スペクトルの特徴を利用し、食品のスペクトルと内部 品質との間をモデル化することにより非破壊検査を実現している。食品中に豊富に含まれる成分の含有量を正確に予測した例は多いが、微量成分に対する予測精 度は依然として低水準である。近赤外領域では微量成分の小さなピークは他成分の大きなピークの中に隠れてしまうことが多い。そのような場合に目的成分の ピークを分離するため、スペクトルの微分が用いられる。一般に微分次数ごとに異なる成分のピークが強調されるため、予測対象ごとに最適な微分次数も異なる と考えられる。そこで本研究では微量成分である蜜柑の酸度を対象として様々な微分次数のスペクトルを組み合わせてモデリングを行った。その結果、蜜柑の酸 度予測においては1次微分スペクトルのみを用いることで従来と比較して高精度な予測モデルを構築できることを示した。さらに、波長領域選択手法の一つであ るGAWLS-SVR法を用いることにより、蜜柑の1次微分スペクトルから酸度予測において重要な波長領域の選択に成功した。
kanma_b
三島 和晃 半経験的量子化学計算を用いたアミン化合物の物性予測モデル構築及び新規化合物の提案
地 球温暖化の対策として二酸化炭素の大規模排出源における回収貯蔵技術(CCS)が広く検討されており、特に有力な二酸化炭素の回収法としてアミン化合物 による化学吸収法が知られている。アミン化合物の水溶液による二酸化炭素の吸収と、後に加熱されることによる二酸化炭素の放散の2つの過程のサイクルによ り二酸化炭素の分離回収が可能となる。CCSにおける二酸化炭素の回収コストの低減のため、吸収及び放散の性能が高いアミン化合物が必要の探索が求められ ている。本研究では、アミン化合物の吸収及び放散の性能を評価するために有効と考えられる半経験的分子軌道法を用いて各化合物の情報を得て説明変数とした のち、PLSモデルと変数選択手法を併用して吸収速度及び放散量の実験値との間に物性予測モデルを構築し、その予測精度を確認した。のちにコンピュータ内 で仮想的に生成した多数のアミン構造に対してこのモデルを用いて吸収速度と放散量の性能予測を行うことで、二酸化炭素回収に用いる有力な新規アミン化合物 の提案を行った。
mishima_b