卒業論文・修士論文の概要 2010年度

修士論文

前田 祐希 ケモメトリックス手法を用いた光電極による水素製造装置設計に関する研究
光 電極を用いた水分解による水素製造法は二酸化炭素をほとんど副生せずに太陽光エネルギーを水素に変換するための方法であり、その活用が期待されている。 しかし、光電極に用いる光触媒に関する研究は盛んに行われている一方、反応器に関する研究はほとんどなされていない。そこで本研究では、光電極による水素 製造装置を設計することを目的とした。反応器において高効率な反応を達成するためには、反応器の構造パラメータを反応に対して適切に決定する必要がある。 このような反応器の最適設計問題に対して、流体シミュレーションが有効な手段の一つとなる。しかし、流体の流れが反応に有利な状態を形成するように反応器 の構造を決定するためには、多くのシミュレーション回数が要求される。特に一回当たりの計算時間が長いシミュレーションを用いる場合、その高い計算コスト が障害となる。そこで本研究では、シミュレーション結果を統計解析し、構築した統計モデル(メタモデル)を利用する事でシミュレーション回数を抑制しなが ら反応器の最適設計を行うことを試みた。本研究で解析の対象である光電極による水素製造装置は、効率的な反応を達成するために最適化を行うべき応答因子が 複数存在し、それぞれの因子がトレードオフの関係にあるという特徴を持っている。そのため、反応に有利な構造パラメータを決定する事は困難と考えられてい た。しかし、メタモデルの構築と遺伝的アルゴリズムによる多目的最適化により、100回の流体シミュレーションから構造パラメータのパレート最適解を導出 した。またこの解析により、統計手法による流体シミュレーションの反応器設計への効率的な適用の可能性を示した。
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山城 直也 統計手法を用いた共沸に関する予測モデルの構築
化 学プロセスにおいて、分離操作はエネルギーコストの面で大きなウェイトを占めると言われており、プロセス設計において非常に重要である。様々な分離プロ セスの中でも蒸留による分離は、他の手法に比べてコストが安い、装置の構築手法が既に確立されており耐久性も高いといったメリットがある。しかし、蒸留に よる分離においては共沸現象がしばしば問題になる。そのため、古くから共沸現象を予測する手法が開発されてきたが、既存の手法は一部の化合物に関して解析 を行えないことや予測精度が若干低いことなどいくつかの問題が見られた。 そこで本研究では統計手法を用いて共沸に関する予測モデルの開発に取り組み、任意の二、三成分系溶液の共沸有無判定モデルと共沸組成予測モデルを構築し た。検証を行った結果、この手法は既存の手法で解析できない化合物に対して予測精度が良いことを確認することができた。また、本モデルを用いることによ り、二成分系溶液の分離可能性の予測や共沸蒸留の第三成分候補提案などを実際に行い、本研究の実用性を確認することができた。
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卒業論文

芹川 正寛 近赤外スペクトルを用いた柑橘類の糖度、酸度予測モデル構築
近 年、消費者の食の安全に対する意識が向上し、徹底した品質管理の必要性が増してきている。そのため、非破壊かつ迅速に全数検査を行う手段として近赤外ス ペクトルを用いた内部品質予測の導入が進んでいる。様々な果物において、非破壊で迅速に各種内部品質を推定するモデルが望まれている。果実の糖など多量に 含まれる成分についての予測は実用的な水準に達しているが、酸などの少量成分に対する濃度予測は依然として難しいのが現状である。酸度予測モデルの精度が 低い理由の一つとして、土壌成分や糖度の予測とは異なり微量分析であることが挙げられる。近赤外スペクトルにおける酸のピークは非常に微弱であり、他成分 のピークの影響を強く受けていると考えられる。また、例えばみかんにおいては、りんごとは異なり果実の大きさが様々であるため、近赤外スペクトル測定の際 に最大で2倍ほどの光路長差が生じる。この光路長差が酸の吸光度に強く影響を与えていると考えられる。そこで本研究では、近赤外スペクトルを用いて果実の 内部品質を精度良く予測することを目的とし、酸度予測について他成分のピークや光路長差を検討することで、それらの影響を軽減したモデルの構築を試みた。 適応的な外れ値除去手法とGenetic Algorithm based WaveLength Selection法を駆使することで、酸度の予測精度の向上が達成され、さらに酸度予測に重要と考えられる波長領域の抽出に成功した。
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