卒業論文・修士論文の概要 2007年度

修士論文

植村 圭祐 ケモインフォマティックス手法を用いた新規触媒設計支援手法の開発
自 動車の排気ガス中に含まれる炭化水素やCO、NOx、PM(粒子状物質)は大気汚染や呼吸器疾患の原因となるため自動車用触媒を用いて浄化する必要があ る。ところが自動車用触媒は複雑でスケールアップが困難であるため開発は容易でない。そこで本研究の目的は、自動車用触媒の実験データを基に実験データと 理論の両面から自動車用触媒開発の指針を得ることとした。DPF(diesel particulate filter)はススなどのPMを捕集するフィルターである。ススがある程度蓄積した場合DPFを再生させる必要があるが、このとき温度が異常に上昇して DPFに亀裂が生じることがあり、亀裂が発生しないようなDPFの設計やエンジン等の制御が課題となっている。はじめにケモインフォマティックス手法を用 いてDPF再生試験データの解析を行い、触媒組成、コーティングの種類、ハニカムの構造と物性、試験条件、からDPF再生時の最高温度を予測するモデルを 構築し、亀裂の発生を防ぐために最高温度に対する影響が大きい因子を調べた。次にDPF再生の化学工学シミュレーションを行いDPFの最高温度を求めた。 そして最高温度を低く抑え亀裂の発生を防ぐために重要な因子をシミュレーションにより調べた。最後にシミュレーションとケモインフォマティックス手法を組 み合わせてDPFの最高温度を予測するモデルを構築した。
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岡野 圭央 3次元構造活性相関を用いた不斉合成触媒設計に関する研究
金 属サレン錯体はオレフィンの不斉エポキシ化触媒として様々な誘導体構造が数多く報告されている。不斉反応は、反応中間体生成時におけるサレン触媒の立体 障害によってオレフィンがサレン構造へ選択的に接近することに由来しており、触媒設計のためにはサレン触媒の立体的な構造を定量化することが非常に重要で あると考えられる。しかしながら、不斉化反応の立体選択性を生じさせる活性化エネルギー差はごくわずかであり、遷移状態探索を用いて理論計算から定量化を 行うことは通常非常に困難である。したがって、本研究ではサレンの立体的な特徴とその不斉化反応の立体選択性について3次元構造活性相関(3D- QSAR)を用いて定量的な解析を行った。文献から抜粋したサレン触媒構造について密度汎関数法あるいは半経験的分子軌道法を用いて3次元構造の最適化を 行った後、反応温度等の実験条件も説明変数に含めてCoMFA、GARGS、CoMSIA、GRINDによる解析を行った。その結果、予測精度については GARGS、GRINDでは予測精度を示すQ2は0.5を超え、十分な予測性を示し、CoMFA、GARGSにおけるモデル回帰係数を見ることによって有 効な構造を検討することもできた。
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卒業論文

青木 宏 バーチャルライブラリ構築のための構造発生手法の考案
創 薬の初期プロセスであるリード探索を効率的に行うため、質の高いバーチャルライブラリの構築が望まれている。そこで本研究室では、コンピュータを用いて 質の高いバーチャルライブラリを構築するシステムの開発を行っている。このシステムの評価・改良のためには、構築されたライブラリを評価する事が必要であ る。そこで本研究では、まず、ライブラリの評価モデルの構築を行った。ライブラリの評価指標として、ドラッグライク性、多様性、医薬品ライブラリとの分布 の類似性の3つについて考察した。ドラッグライク性評価値は、既往の研究で構築されたSVRモデルをもとに計算した。多様性評価値は、化合物の構造記述子 間の距離をもとにして計算した。類似性評価値は、多次元データを低次元に写像する手法であるSOMを用いて計算した。これらの評価指標を検証するため、人 工的なライブラリを作成し評価値を計算した結果、評価指標の妥当性が確認できた。これらの評価指標を用いることでライブラリ構築システムの改良を行う事が 可能となる。本研究においては、図のようなシステムを提案した。医薬品ライブラリをもとにして、交叉・突然変異、選択、取り出しの操作を繰り返し行う事 で、ライブラリのドラッグライク性・類似性を維持しつつ多様性を増す事が出来ると考えられる。
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赤坂 宏一郎 有機合成経路設計システムにおける戦略部位の統合とその応用
有 機化合物の合成経路をコンピュータにより設計するシステムとして、今までに幾多の有機合成経路設計システムの開発が行われてきた。有機合成 経路設計システムは、ある標的構造からその前駆体構造を求めることを繰り返すことで反応経路の導出を行うシステムである。現在では本研究室で開発を続けて いる、AIPHOS、KOSP、TOSPの3つの有機合成経路設計システムが利用可能なシステムとして存在している。本研究室はこれらのシステムの開発を 続け、利便性の向上に努めている。本研究では戦略部位の統合を行うことで有機合成経路設計システムの改良を目指した。戦略部位は有機合成経路設計システム が標的構造から前駆体構造を導出する際に着目する部位である。AIPHOS、KOSP、TOSPの3つの戦略が異なるシステムから得られる戦略部位を統合 することにより、今までに得られなかった新しい反応経路の導出を確認した。
 akasaka_b
光山 倫央 データマイニングによる代謝位置予測の研究
医 薬品は生体内で酵素の触媒作用により代謝を受け異なる物質へと変化する。医薬品開発ではこの代謝後の物質の同定が重要であるが、主要な薬物代謝酵素群 P450の特性が解明されていないため、代謝生成物の同定には長期間の検査を行うほか無いのが現状である。したがって医薬品開発の効率化、低コスト化を図 るため、代謝生成物を予測する手法が望まれている。そこで本研究では、代謝生成物予測と関係の深い代謝位置選択性の知見を得る事を目指し、P450の中で も薬物代謝との関わりの深い3A4、2D6、2C9の基質データに対してデータマイニングを適用した。データマイニングとは大量のデータから機械学習など の手法を用いてルールを得る手法であり、これにより基質の代謝位置に共通する、隠れたパターンを発見する事を目指した。各基質データに対して構造記述子を 計算し、決定木やRough set theory (RST)、帰納論理プログラミング(ILP)などの様々なデータマイニング手法を適用し、代謝位置に共通するルールの導出を行った。その結果、いくつか の有用なルールが得られ、この問題に対するデータマイニング手法の有用性を示す事が出来た。
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宮尾 知幸 爆発物検出システムにおける統合化モデルの構築
テ ロの脅威が増加していることに伴い、爆発物検出器の性能を向上させる技術開発が世界各国で行われ、成果を挙げつつある。しかしながら個々の検出器の精度 向上には限界がある。爆発物検出においては、爆発物ではないものを爆発物と誤認するよりも爆発物を検出しないことに対するリスクが大きいため、一つの検出 器で同定するより複数の検出器を組み合わせて同定する方が現実的な手法であると考えられている。そのため個々の検出器の特徴を把握し、その上で検出器を統 合・システム化するための手法の構築が求められている。本研究の目的は種々の検出器を組み合わせることで、精度の高い、誤認率の低い爆発物検出システムを 構築することである。具体的にはミリ波を用いた検出器、VUV-TOF-MSを用いた検出器、中性子線を用いた検出器、をシステムに組み込む検出器として 検討した。ミリ波では可視データが、MSや中性子線を用いた検出器ではスペクトルデータが得られる。それぞれの検出器の特性に合わせたデータの処理法、爆 発物判定の手法を提案することで統合化システム構築への足がかりとし、その結果をふまえ実際に統合検出システムの提案を行った。
 miyao_b