卒業論文・修士論文の概要 2006年度

修士論文

右田 啓哉 QSPRによる物性推算システムの理論的構築とその応用
有 機化合物の分子構造設計や合成経路設計において、関連する化学構造の物性情報をQSPR( Quantitative Structure-Property Relationships )によって得ることで、候補のスクリーニングを効率的に行うことができる。このスクリーニングの質をより高めるために、QSPRモデルの予測精度を改良す る手法が望まれている。本研究では既存のQSPRを発展させ、その予測精度をより高めるための新規な手法を二つ考案し、検証を行った。一つは化学構造のパ ターンを識別し、QSPRモデルの適用範囲を明確に定義する手法である。もう一つは対象の化学構造の特徴を踏まえて複数のQSPRモデルを統合し、予測値 を得る手法である。水溶解度の実測データを用いてこれらの手法を検証したところ、QSPRモデルが安定した精度で予測できる化学構造の集団が正しく認識さ れ、予測値の信頼性が保証されることと、モデルを統合すると各々のモデルを単体で適用する場合よりも予測精度が高まることが示された。卒業研究から開発し ている物性推算システムには、これらの手法が取り込まれる一方、実用化のために化学構造パラメータを計算するツールと統計モデルを作成するツールを新たに 開発して組み込んだ。これらにより、多様な化学構造について精度の良い物性予測値を自動的に出力する物性推算システムを構築することができた。
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卒業論文

尾﨑 由隆 統計的手法を用いたドラッグライクネス評価モデルの構築
医 薬品開発の初期に行われるリード化合物の探索においては、目的の活性を示すだけではなく、優れた薬物動態を示す化合物を発見することが非常に重要であ る。そこで本研究では、医薬品と非医薬品の情報を統計的手法によって解析し、ドラッグライクネス評価モデルを構築することを目的とした。市販の化合物DB および医薬品DBから抽出した化合物群について、構造記述子による数値化を行いPLS法やSVR (Support Vector Regression)法などによる定量モデルの構築を試みた。その結果として得られたモデルを用いて、医薬品1,000個、非医薬品1,000個からな るテストデータのドラッグライクネス予測を行ったところ、予測精度は80.8%であり有意なモデルであることが確認された。また、分子式などの制約をもと にコンピュータで自動生成された構造群に対して本モデルを適用し、ドラッグライクネス評価モデルの有効性について検証を行った。このモデルを用いてコン ピュータ上で評価を行い、薬物動態に優れた医薬品候補を優先的にテストすることで、臨床段階での薬物動態に関する問題が軽減され、効率的な医薬品開発が可 能になると期待される。
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金子 弘昌 新規ソフトセンサー手法の開発およびプロセス管理への応用
化 学プラントを運転する際には、プラントの運転状態を監視し、温度、圧力、流量、濃度などのプロセス変数を制御する必要がある。そのため制御したい変数を オンラインで測定する必要があるが、必ずしも簡単に測定できるとは限らない。そこで、ソフトセンサーという方法が考案されている。ソフトセンサーとは、オ ンラインで測定可能な変数と制御したい変数の間で数値モデルを構築し、目的とした変数の値を推定する方法である。ソフトセンサーは大変有用な手法である が、プラントの運転状態が変化する際に以前のモデルが適用不可能になる(モデルが劣化する)、という問題がある。本研究ではこの問題に着目し、ICA- GAMLR法を考案して問題の解決を目指した。ICA-GAMLR法は、信号処理の分野などで用いられるICA(Independent Component Analysis)と、最適化手法の一つであるGA(Genetic Algorithm)とを組み合わせた回帰分析手法である。ICAにより温度、圧力、流量などの説明変数から潜在成分を抽出し、GAを用いてそれらの成分 の中から目的変数の回帰に有用な成分のみを選択することで、モデル劣化の検出が可能であることを示した。
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